序・マイナーピークことはじめ・・・
山岳部の2年生の9月、私は、私は南会津の白戸川〜丸山岳〜会津朝日岳という山行に連れかれた。悠然と流れる白戸川の遡行に3日をかけて丸山岳に立つと、あとは会津朝日岳を経て黒谷集落へ至る登山道を1日歩くだけというはずであった。ところが、この登山道が廃道同然で、おりしものガスで丸山岳の下り口が分からず半日ロス、さらにその後のヤブコギで会津朝日に着くまでに、丸山岳から丸2日を要した。ここまで来れば、今度こそちゃんとした一般登山道を半日下るのみ…、と、今まではヤブの中であまり意識しなかったのだが、前日までのガスとはうって変わって、空は素晴らしい秋晴れであった。そしてその下に、毛猛・未丈、只見半島、越後駒、平ヶ岳、会津駒と幾重にも山並みが広がっていた。1年半の合宿を通じ、北アルプスの山々には詳しくなった気でいたが、それとはまったく違う、名も知らぬ山々がそこにはたくさんあった。ヤブコギが終わったという安堵感で気分が高揚してたせいもあるのであろうが、私はこの景色にある種の衝撃を受けた。
そういえば、その頃の私は(今でもその気はあるが)、フリーや岩登りが好きではなかった。一生懸命トレーニングしようというストイックさがないから、結果がはっきりと表れる、フリーを嫌っていただけかもしれない。酒の席で先輩に、「より高く、より困難に」のような純なアルピニズム論をされると、自分は山岳部に向かないんじゃないかと、考えこんでしまった。
そんな閉塞感の中にあって、会津朝日からのあの山並みは、「より高く、より困難に」とは違った、未知な場所への好奇心という、山登りの方向性を示してくれている気がした。
もちろん、国内には、地理的な意味でのパイオニアワークの発揮される、未知な場所など、ほぼないと言ってよい。しかし、回りにはぞろぞろ人がいて、資料もいくらでもある有名ルートを登るのと違って、会津朝日周辺のようなマイナールートには、パイオニアワークの時代を気分をちょっぴり味わいながら、探検ごっこを楽しむ余地がまだある。例えば、地図をみて自分だけのラインを引いたり、思わぬ湿原に歓声を上げたり…。
因みに私は、マイナーな山域の記録を集めるのも好きだ。全然知らないような山域の記録や、この山域でこんな掘り出し物があるんだという記録には、感心してついつい惹き込まれてしまう。それが、その知らない山域に行ってみよう、とか、自分ならこんな発想でこの山域に行ってみようとか、次の山につながってゆくのだ。
そんなこんなで、マイナーと呼ばれる場所にたくさん行ってきたし、本棚には記録もたくさんファイルされている。そこでマイナーな山域を地域別に取り上げ、その魅力を紹介してゆく、このコーナーを連載することにする。 (1999.7
故・榎並ユージ:記)