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奥利根・刃物ヶ崎山
〜ヤブとボロ岩に囲まれた奥利根の異端児〜
 
未踏の岩壁が広がる刃物ヶ崎山東壁
 
 奥利根の玄関口「矢木沢ダム」の北西に位置する不遇な山、『刃物ヶ崎山-はもんがさきやま』。今から9年前、奥利根本流溯行を目指し、半ば自然に還りつつある湖岸道のヤブをこいでいたとき、対岸の奈良沢方面に黒々とした山を見かけた。「あれが刃物ヶ崎か!」。様々な記録、雑誌のバックナンバーからその存在は知ってはいたが、初めて見るその姿は一言「異様」であった。
 標高1600mと少々。決して高いとは言えない標高である。しかし刃物ヶ崎山の刃物たる由縁はその東側に展開される奥壁にある。隣接する谷川連峰と異なり、奥利根は大滝はあれど岩壁は少ない。刃物ヶ崎山東壁は、矢木沢ダム以奥で壁と名が付く唯一の場所である。当然ながら場所柄、壁といえどもヤブ壁である。しかしながら、稜線から300mの標高差で一気に切れ落ちる東壁は、白桧沢の上流部、刃物沢の各沢が鋭く切れ込み、ピークを中心に左右に翼を広げる様はまさに『奥利根のジャヌー』と形容してもいいだろう(もちろん言いすぎである)。
 この山のパイオニアはマイナピーク道の始祖、『東電山の会』。執拗なゲジゲジ探しの末、この山に目をつけ、数度の偵察の後、1968年、東壁の冬季初登攀をなしえた。その後、1973年、日本アルピニストクラブがGWに3本のルンゼを登攀。それ以後は一般ルートである東南稜を除いて、東壁の記録は見られなかった。四半世紀の空白の後、1998年3月浦和浪漫山岳会パーティーが第2尾根を登攀。ついで同年6月に同山岳会パーティーが白桧沢を遡行し、二ノ沢〜二尾根上部を経てピークに達している。尾根については第三尾根も浦和浪漫山岳会パーティーによって登られた。だが、沢・ルンゼについては上記4本以外現在も記録未見である。
 近年、渡船によって容易に入山できるため賑わいを増した奥利根であるが、孤高の山「刃物ヶ崎」は、ボロボロの矢木沢花崗岩やシャクナゲヤブに囲まれて、いまだ静寂を保っている。
 この奥利根の異端児-刃物ヶ崎山-の積雪期の尾根、ルンゼ・沢について解説したい。
 
■山域概念
 矢木沢ダムの北西約3km、また、上越国境の桧倉山から東に延びる尾根上に位置する標高1607mの山である。北面はコツナギ沢右岸の沢、南面は矢木沢左岸ジロウジ沢、東面は白桧沢に囲まれる。今回取り上げた東面は奥壁状を呈し、白檜沢の各支流が、尾根に分けられ源頭部でルンゼ状になり急激に高度を上げている。
沢、尾根の名称は、岳人613号P128の概念図に従った。
 アプローチであるが、『ユージのマイナー〜』に紹介するくらいなので、当然刃物ヶ崎山には登山道はない。白桧沢までのアプローチは、無雪期ならば矢木沢ジロウジ沢支流四ノ沢を溯行し山頂に至る。越後側清水の集落から柄沢山を経てコツナギ沢を下降して白桧沢まで。矢木沢ダムから渡船で白桧沢を溯行する。ダムからヤブこぎが考えられる。積雪期ならば、矢木沢ダムの左から家ノ串山西峰を経由して、東南稜上、家ノ串〜刃物ヶ崎間の最低コルから第1尾根を下降し、途中から刃物沢に降りるのがいいのではないか。最低コルまでは尾根が広いので、スキーがあれば時間短縮できるだろう。ただし積雪の具合によっては一尾根からの下降は注意した方がいいと思う。ビミョーな斜面だ。いずれにしろアプローチには1日もしくはそれ以上かかることは覚悟したほうがいい。蛇足ながら、積雪期の須田貝ダム以奥は車両通行止めである。車止めゲートから矢木沢ダム間の湖岸道歩きが往路最初の核心であり、復路最後の核心である。
 
■全体の概念をつかむ資料
 
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