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日本山岳会青年部「きりぎりす」
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連載「雑誌を読む」第2回
キオリにぐらり
――何とかしたよ『free fan』――
松原 尚之
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最近私がもっとも心を揺さぶられたクライミングの記録といえば、何と言っても、クリス・シャーマによるRealization(5.15a)の成功である。昨年の7月18日にフランスで達成されたこのクライミングのニュースを、私は『Rock & Snow』リニューアル2号で知り感動したものだが、どうも日本のクライマーたちは、この輝ける偉業に対する評価と言うか感応が鈍いような気がしてならない。(それとも、私のまわりだけかな?)
だって、100m走で人類がはじめて10秒の壁を破ったときは大騒ぎしたわけでしょう? フリークライミングにおける5.15aというグレードを、100m走における初の9秒台に比肩しうる記録とみなしてよいのか、それともそれは5・16aまで待つべきなのかは私も迷うところなのだが、少なくとも5・15aという数字は、私にそんな迷いを喚起させるだけの記録なのである。だって、5.14aの時、私はそんな気持ちは抱かなかったし、クライマーの当然の通過点と思っていたもの……。(なんて、お前はいったい、いくつまで登ってんやねん?)
さて、本題に入ろう。日本フリークライミング協会会報『free fan』最新35号に、同誌に「Boulder Now!」を連載中の木織隆生が、同連載の第4回として「ボルダリングとハードルートの相関関係」と題する秀逸な論文を発表している。前述のクリス・シャーマと、彼の最強のライバルと目されているデイブ・グラハムというアメリカの若きモンスター2人の最近の活躍を例にとりながら、「ボルダリングがどうルートクライミングのパフォーマンスと関係しているのか」について子細に論じているのである。
木織が、クリスとデイブの2人をとりあげたのは、他でもない、彼ら2人がここ数年ほとんど「ボルダラー」であったにもかかわらず――特にクリスなど3年間ボルダリング・オンリーとさえ言える生活であったにもかかわらず、ルートクライミングにおいても2001年に入り、いきなりがつんがつんと世界最高難度のルートを落としまくっていることに触発されたからである。
私がこの論文において木織に感心したのは、内容以前にまず、今このテーマをとりあげたその感度の良さに対してだ。
彼が論文中でも書いているように、ボルダリングとルートクライミングが関係しあうなどといったことは、何も新しいコンセプトでも何でもない。しかし、そうでありながら、なお、「ボルダリングとハードルートの相関関係」は、今まさに誰かによって再び論じられるべきテーマであったと私は思う。それは多くのフリークライマーが、まだ明確に意識しないくらいのレベルで、でも確かに知りたいと欲していたテーマだったのだ。そう、書かれてみてはじめて、“ああ、こういう論考を自分は読みたかったんだ”ということに気づく、といったような。そんな“旬”なテーマをいち早く嗅ぎとってきちんと論文に仕上げた木織のセンスに私は感心したのである。
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