>>今そこにある危機〜衝撃のヒヤリハット集〜

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 雪崩直撃


 ●ヒヤリハット度:★★★★★
 ●鹿島槍ケ岳北壁主稜
 ●2001年4月8日
 ●西澤(龍鳳登高会)・大野(風来坊)

1.日時 2001年4月7日〜8日
2.場所 鹿島槍ヶ岳北壁・中央ルンゼ (状況により主稜に変更)
3.メンバー 西澤直志、大野雅久
4.行動概要
4/7 大谷原9:40〜天狗の鼻16:40
 大野さんの車で、川崎の自宅を4/6の11時30分頃出発。この日は天狗の鼻までだったので、大町にある大野さんの別荘で、5時間くらい仮眠をとる。大谷原を9:40に出発、腐った雪にズボズボはまりまくり、16:40、天狗の鼻着。ツェルトを張り、翌日に備えて早々に寝る。今回はラッシュ形式なので、ペラシュラしかなく結構寒かった。

4/8 
天狗の鼻3:40〜中央ルンゼ取付6:10-30〜中央ルンゼ〜敗退決定6:40〜主稜側壁取付 8:00〜主稜9:30〜雪崩発生10:00頃〜脱出工作10:30-12:00〜スノーコル12:30-13:00〜天狗の鼻15:30-16:00〜大谷原20:30
 朝2時過ぎ起床。ツェルトの内側は霜が付着しており、結構気温は下がっている。コンディションは上々と思われた。3:40、満月の月明かりのなか出発。トラバースにトレースはなく、途中雪の状態が不安定な為3ピッチザイルを出す。6:00頃より北壁上部に日が当たり始め、上部よりスノーシャワーやら小石やらが落ちてくる。6時10分に中央ルンゼの取付き着。登攀の準備をしていると、上からの落下物が更に激しくなる。上部に行けば落下物も減るだろうと意を決して1ピッチ目の氷暴に取付く。しかし、登り出した直後に、落石を受け一旦取付きに戻る。その後も、ルンゼ側壁のブロックが崩壊し、本日の状態で中央ルンゼは無理と判断し、ルートを主稜に変更する。気温は上がっており、主稜の下部の氷暴、岩壁帯の状態を懸念して、まだ日影の正面ルンゼ側の雪壁より主稜に這いあがることにする。
 一見簡単そうに見えた雪壁だが、上部はかぶり気味のきのこ雪になっており、時間がかかる。2ピッチ目で不安定な雪のリッジをまたぐと、見覚えのある、主稜中間部のルンゼであった。(9時30分位)ルンゼを30m登り潅木でビレイ。その後、スノーシャワーの隘路を避けて右寄りにルートを取りルンゼを直上。時折、スノーシャワーが上から来るが、大した量ではなかった。西澤リードでルンゼを登り50m延びきった後、コンテに切替てそのまま右寄りにルンゼを詰める。雪室はシャーベット状で悪いが、ザイルの必要を感じるほどではなかった。

事故発生
 ルンゼを詰めていると、雪崩れが上から来た。最初はスノーシャワーかと思いピッケルを根元まで打ちこんで耐えていたが、突然すっ飛ばされ、ものすごい勢いでルンゼを落下して行く。「こうやって死んでいくんだな・・・。」なんて妙に冷静でいながらも、「意識だけは、最期までしっかり持て。北壁下部の岩壁帯さえ無事でいられれば助かるかもしれない。」(このときは、主稜正規のルート沿いに落ちてるものと思っていた。)と自分に言聞かせた。体は、ルンゼから空中に放り出され、岩の上で2.3回バウンドしたが、意識はしっかりしており「もしかしたら助かるかな。」と思った瞬間、ザイルに制動がかかり止まる。まずは、体の確認をするが、右太腿に打ち身程度の痛みは感じるが、その他は骨折をしている様子もなくひとまず安心をする。近くの潅木でセルフビレイをとり、大声で大野さんの名前を呼ぶ。応答はなく、不安が募る。何度も大声で大野さんを呼びながらザイルを引っ張ってみる。こちらも気が動転していたので、これからどうしたものか冷静になって考えなければと思ったとき、「西やーん」という大野さんの声が聞こえた。やがて、大野さんがリッジの上から顔を出し、お互いの無事を確認しホッとする。大野さんも大した怪我はないみたいだ。
 どうして止まったのか不思議であったが、雪崩れがあったとき、大野さんより50m上を登っていた僕は、主稜のリッジを飛び越して正面ルンゼ側に滑落し、大野さんは、主稜の正規のルート側に流されたらしい。二人を繋いでいたザイルが、主稜の雪稜に食い込んで、シーソー状になって助かったらしい。僕は、40mから50m滑落したが、大野さんは手にザイルが絡みついたため、20m〜30m程度でありひじょうにラッキーであった。(大野さんの手は若干腫れてしまったが、命に比べれば・・・)
 大野さんが、雪稜を切り崩し、食い込んだザイルを開放するのに30分以上かかる。その後、大野さんが、僕の場所まで懸垂で降り、潅木を支点に1回半の懸垂で正面ルンゼに降り立つ。正面ルンゼは、雪崩が頻発しており、主稜側を急いでスノーコルまで下降、ようやく一服する。
13時過ぎ、北壁の長−いトラバースを終えて天狗の鼻には15時30分辿りついた。緊張が解けてくると、右足の痛みが増して来る。労と打ち身で痛めつけられた体を引きずって天狗尾根を下りつづけ、20時30分大谷原へ帰りついた。

事故を振り返って
 今回の事故は改めて「雪の恐ろしさ」を思い知った。本年は、3月末頃から新たにかなり降雪があったためか、事故当日は正面ルンゼ、中央ルンゼ、カクネ里の各ルンゼとも雪崩れのオンパレードであった。本来は、3月下旬に北壁を狙っていたのだが、仕事のやりくりがつかず4月に持ち越してしまい、何が何でも1本登らなければという焦りがあった。結果的には、このことが、遅い時間に主稜に取付くことになってしまい、今回の事故の引金になったと言える。又、1回登ったことがある為、主稜を舐めていたことも原因の一つである。山は1回として同じ顔であるはずはなく、特に雪山は冷静な判断が求められる。まさに、驕りがあったと言える。又、同時登攀で登っていた点も検討を要する点であるが、雪質は悪くともザイルの必要性は感じるほどではなく、ある程度安定した所でザイルは解いて登る予定であった。(結果、ザイルを解かなかったことが二人の命を繋ぎとめたのだが。)結局は、雪崩れの予見が出来なかったこと、又、あっても小規模なスノーシャワー程度であるとの認識が甘かった点から、新たなるミスジャッジをしてしまった。
 今回生還出来たのは、全くもって運が良かったの一言であり、山に対する謙虚さや、自分の甘さ、弱さをもう一回見つめ直して見ようと思う。又、パートナーの大野さんには、大変精神的に助けられ感謝している。

最後に
 山やルートの状況についてあれこれ書くのは、余り好きではないのですが、状況判断の参考にでもなればと思い、一応書いておきます。今回、鹿島の北壁は、各ルンゼは日出の5時30分を過ぎると、小石やら、氷やらが落ちてきて、8時には大きな雪崩れが発生しており、正面ルンゼは、かなり大規模なものが頻繁に来ておりました。中央ルンゼもルンゼ側壁のきのこ雪がブロック状になって落下して、雪崩れを誘発しているようです。雪はまだ落ち着いておらず、北壁を狙うには、状況によってですが、8時頃には上部雪田に抜けている必要があるかと思います。

 

10/10

    


 

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