ここでは、何処にでも出ていそうな基本的なテクニックは他の本を見てもらうことにして、ゴルジュをすばやく安全に抜けるために必要なテクニック・裏技を中心に解説したい。ゴルジュ突破にはフリークライミングも大事だが、それ以上に、いかに水とお友達になれるか、プロテクションを確実にセット出来るかが成否の分かれ目となる。
|
| ●チョックストン滝の攻略法 |
滝の裏側に潜り込める事が多く、いかにして瀑水を突破して裏側に潜り込むかがポイントになる。瀑水に突っ込む形になるので、ライフジャケットを装着しておいた方がいいだろう。側壁をへつっていって、最後は一気に側壁を蹴って流芯を越えて、CS滝の裏側まで全力で泳ぐ形が多いかと思われる。潜り込んでしまえば、カムを使った人工登攀や突っ張りで突破が可能な事が多い。ただし、太い流れが収束しているCS滝の瀑心は、引きずり込まれると、出られなくなるものもあり、注意が必要である。
|
| ●直瀑の攻略法 |
この手の滝は、豪快なものが多い割には、割合と突破しやすいものが多い。瀑水の直下に行って、巻き込まれる事がないように、釜をへつって、滝の側壁に取付けば良い。
|
| ●斜瀑の攻略法 |
この手の滝には、CS滝以上にやっかいなものが多い。緩くトヨ状に釜に入り込んでいるものには、釜の中で複雑な巻き返しが起きて、釜全体が白く泡立っているもの、そして渦を巻いたりしているものもある。黒薙川北又谷の大釜での溺死事故をはじめ、事故が最も多いのがこの種類である。巻き返しの流れに乗って、壁に張り付いたりするが、壁のはりつきに失敗した場合は、渦に巻き込まれてしまうと、命を落としかねない場合もあるので、十分に注意した方が良いだろう。
|
| ●アグレッシブテスト |
落ちたところが滝壷ならまだましというものだが、岩盤だったりしたら、それこそひとたまりもない。滝の登攀は常にルートの1ピッチ目を登るようなものだ。そういうわけで1つ1つの支点は、強度の面で信用できるものでなくてはならない。決めた支点は、トリッキーな場合ならともかく、なるべくきちんとテストし、墜落距離の事を頭に入れて登りたい。
^次の支点をセットしたら、そこに1個のデイジーチェーン付きのあぶみをクリップする。
_あぶみの最下段に足をかけて静荷重をかけてみる。ここで落ちても、デイジーチェーンと体がつながっているので、下の支点にいるときと対して変わりがないから問題ない。
`問題なさそうだったら、ダイナミックに跳ねてみたりする。
a大丈夫だったら乗り込んで、次の支点をセット。
もしテストで外れても、あまり落胆せずにもう一度打ち込めばいい。なお、テストをやってはいけないのは、スカイフックに乗り込んでいるとき、体重しか支えていないことがあからさまに分かるような場合である。
なお、残置支点は、ゴルジュの中という特殊性のため、著しく腐食したり、流水で吹っ飛んだりしているものも意外と多い。使用する際は、残置支点が信頼のおけるものであるかどうか、きちんとチェックしてから使うこと。
|
| ●ユマーリング |
ユマーリングの出来不出来が、突破出来るかどうかを左右してしまうほどの大事な技術である。特にCS滝は、瀑水を被りながらの空中ユマーリングを強いられる事もあり、濡れた体の重さもあって、非常に苦しい。
また斜め方向・トラバースのユマーリングも多い。正面突破が難しいゴルジュ内の滝の登攀では、側壁を攀じる事は頻繁にあり、また、トラバースが混じる場面も多い。ユマーリングの最中に振られると、壁と違って、それは時として水流の真下に落ちてしまったり、最悪、渦巻く釜や激流にドボンして溺れることも考えられる。そういう可能性のある時は、ユマーリングをやめて素直にフォローしたほうがいいだろう。ただし水に浸かったザックは重たいこと間違いないので、バックロープで荷上げをしてもらってから、空身で登ったほうがいい。
なお、ユマーリングの際には末端の処理だけは注意したい。ロープの余りをそのままにして水の中でぶらぶらさせていたりすると、水の中で引っ掛かる可能性もあるので勧められない。横着した時に限ってロクなことがない。
|
| ●オポジション・バックアンドフット |
チョックストンの乗っ越しや幅2。程度のトイ状ゴルジュで使う技。股を開いて登ったり、背中を壁に押し付けてチムニー状のところを登ったりするのは、狭いゴルジュの中では比較的多い。ジャミングなんかもよく使うテクニックである。ゴルジュの幅が狭く、ホワイトウォーターとなって流れ出しているような場合は、両手を片側の壁に、両足をもう片方の壁に押し付け、突っ張った状態でトイ状の流れから這い上がることも可能である。腹筋を使う疲れる技だが、根性さえあれば両手両足で突っ張ったまま水に触れることなく30m位の移動は可能だ。
|
| ●ショルダー |
1〜2mの段差であれば、滝を人工などで登るよりもショルダーで越えて、引っぱり上げてもらう方が時間もギアも使わずに楽に対処できる。練習と踏み台となる人間の筋力次第で、下の人間があぶみに乗った状態でショルダーしたり、チョックストンの隙間やチムニーの中でバックアンドフットを決めた状態で、さらに人が乗り込むというE難度テクも出来るようになる(人間脚立という・岳人615号参照)。
|