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4月某日
先週末、2002年サッカーワールドカップ南アメリカ予選、アルゼンチン対ボリビアがラパスで行われた。ボリビアは終了10分前まで3対1とリード、現在のところ南米いや世界最強かとうたわれるアルゼンチンを破る勢いであった。さすがにアルゼンチン、最後には3対3に追いつきドローとしたが、キトでブラジルを破ったエクアドルに引き続く快挙かと観衆は最後まで沸いた。
ブエノスアイレスでやれば0−3がボリビアの実力であるというのはこちらボリビアのサッカーファンですら認めることらしい。ペレがいた全盛期のブラジルをボリビアはここラパスで破ったことがある。それを記念するプレートが国立サッカー場の入口に飾ってある。ボリビアはここラパスでやる限りは南米最強の力を発揮するのだ。
キトは2800m、ラパスは3700m。アルゼンチンは年棒合計200億円のチーム、こっちは2億円にもならないだろう。でも高いとこじゃ、我々は強いんだ、とClubAndino
Boliviano(ボリビア山岳会)の面々は意気軒昂である。もちろん一杯入っている。
ところで世界で最も標高が高いところでの試合はどこで行われたのだろうか?
プロの試合はやはりここラパスだろうなあ、とボリビア山岳会会長のカルロスがいう。ラサにだってサッカー場はあるだろうけど、プロの試合はやってないだろう。
プロはラパスで決まり。
じゃあ、アマの試合を含めるとどうだろう。
この上のエルアルト4200mではしょっちゅうやってるよ。やっぱりここかなあ。
いやいや、とここでは私が講釈をたれねばなるまい。ボリビア山岳会の会合にオブザーバーで混ぜてもらってその流れの酒場である。
ヘリコプターのアクセスが出来なかった時代のカンチェンジュンガへのキャラバンはヒレから歩くこと3週間以上もかかるのだが、キャラバンのつれづれに日本人対シェルパのサッカー試合が行われることが何回かあった。5分も走れば動けなくなってしまう日本人はシェルパチームに大敗を喫するのが常であったがね。最後は4400mくらいだったかなあ。
チベットのシクエンヘーには毎年馬の競技大会が行われる広大な草原がある。ここでサッカーをやっているのを見たことがある。4700mくらいかな。
チョモランマBC。平らな所も多くてね、多国籍軍対シェルパの試合が時折行われる。やはりシェルパチームが圧勝することが多いがね。5300m。
じゃあ、チャカルタヤの上でやれば5400mとなって世界最高になるか?
いやいや、コンコルディアでやるものも出てくるかもしれないし、ウエスタンクウム(6200m)だったら整地すればミニサッカーくらいはできるかもしれない。すぐ追い越されちゃうよ。世界一を目指すんならこれくらいは押さえておかなくっちゃねえ。
カルロスは真剣に何事かを考えているようである。
4月某日
カルロスがやってきていう。SHIGERU、良いアイデアだぞ。ここならたぶん世界最高だし破られることもないだろう、ボリビア山岳会とボリビアンアンデスの名を高めることになる最高のプログラムだ、と耳打ちする。
ええ、正気なのかい?
4月某日
ボリビアオリンピック委員会講堂。ボリビア山岳会によるプレスリリースである。
新聞社、テレビ会社、web会社の記者を前にカルロスが話し始める。

「我々は、2001年6月15日から3日間、ボリビアンアンデスの最高峰、サハマ(6542m)の頂上でサッカーの試合を行うことを決定いたしました。これは人類が究極の環境下においても最大の能力を発揮できることを証明する一大イベントであります。また今まで世界で行われたサッカー試合のなかで最も高い標高で行われる試合となるものです。
参加チームは4組予定されておりトーナメント戦を行うことになります。ひとつはボリビア山岳会チーム、もうひとつは陸軍測地研究所チーム、ここまでが確定しております。あとの2チームは広く世界の関係団体に参加を呼びかけるものです。登山家である必要はありません。わがボリビア山岳会の優秀なガイドが完全に安全を保証するでしょう。ボリビア高所病理学研究所は事前の健康チェック・馴化プログラム・緊急時の対策に責任を持ちます。」
Question:サハマの頂上にそんな広いスペースはあるのかね。
Answer:アイマラの言い伝えにあります。以前は天にも届いてしまうほど高かったピークを神が石つぶてをもってすっぱりと上半分を切り取ったのです。おかげでサハマの頂上は平らになっています。もっとも手入れは必要ですがね。
Q:頂上までどうやって到達するのか。
A:BCの他に途中に2カ所のキャンプを設けます。最終キャンプから試合場になる頂上へは2時間程度で到着できるようにする予定です。試合をして、また最終キャンプに戻ることになります。
Q:普通の試合になるのか。
A:15分ハーフにする予定ですが、なるべく普通のルールに近い状態でやりたいと思う。安全面で特別措置は必要だろうが。
Q:外国からの参加はあるのか。
A:ここにいる、Dr.Shigeru Masuyama は日本の山岳会を代表しているただ今ラパスにいる。Dr.Shigeruはボリビア高所病理学研究所の医学的アドバイザーとして参画するが同時に選手としても参加する予定である。
なんでまたそんなクレージーなことを考えたのか、という本質的質問は出なかった。
アルピニスムの精神からすると、山を茶化しており許し難い、という日本でだったら出そうな意見もありませんでしたな。
控えを入れて15人全員がちゃんと頂上に到達できるとは限らないのではないかという至極常識的な感想もなかったな。
私は、日本の山岳会の代表にさせられてしまって、びっくりしたのですが、Director of the Japanese Alpine Club
をそうかれらが翻訳するのにいちいち目くじらをたてることもあるまい。
ボリビアの経済に明るさは見えず政治的混乱も治まらない。5月1日のLabour Dayから全国でゼネストが予定されており前途には暗雲がたちこめている。面白い話題に乏しいここラパスで、ちょっとばかばかしくていい話ではなかろうか。
ところで、どなたか、日本の代表としてサハマでサッカーをしてやろうというクライマーはいませんか。ヒマラヤを予定しているヒトには格好のトレーニングだ。ついでにボリビア山岳会の面々といろんなところに登れますよ。あるいは山に登りたいというサッカー選手は。
それと、新聞社や雑誌社やテレビ会社の方々、面白そうだ取材したいなあとは思いませんか。特にアメリカ大陸に支社や特派員を置いている会社の方いかがでしょうか。
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