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今年の夏、8000m峰チョー・オユーに登った二人の学生がいた。登山という大きな物語(そんなものが未だ通用するかどうかは心許ないが……)の中では、本当にささやかな話に過ぎないかもしれない。でも、二人のした事は、果たして記憶の雑踏の中に置き去りにしていい話であろうか? 二人のエクスペデションの本当の価値を推し量る事は、勿論、その二人自身にしか出来ない事だ。しかし、その解釈はそれを見た人間のする事である。あるいは共有する事もできるかもしれない。
山なんか殆どやっていないような人間が、ヒマラヤ周辺をトレッキングし、メラ・ピークなどのトレッキング・ピークも雑誌に特集で扱われるようになって久しい。しかし、そのような変化の中でも、やはり8000m峰は、特別な扱いだったのではないだろうか。
八千は特殊な世界だと心底思っていた。そこに立ち向かうのは、国内で多くの経験を積み、また海外における高所の経験を積んだエキスパートだけに許された行為だと思っていた。そこを目指すのに、学生だけでたった二人で行くなんて事は、少なくとも、私の常識には無かった。そんな、私の常識を打ち砕いた亜細亜大学の大石君、東海大学の平出君。二人に会いたい!
−−まずは山行の概要から聞こうか。登山のスタイルは?
大石(以下“大”) BCから上は、無酸素・シェルパレスで、タクティクスは中途半端なポーラメソッドです。
−−おお!?全部自力で頑張ったんだ?
大 でも、自分達でやった方が面白いって思ったよな。
平出(以下“平”) そうだね。
−−そういうもんかもしれないね。日本の山でもヒマラヤでも登山の本質的楽しさってのは変わらないのだろうね。日本の山で、荷物を全部背負ってもらって、てくてく歩くってのもあまり楽しいように思えないしね。
大 今回はシェルパ・レスと無酸素というのがテーマだったのですが、実際、シェルパ使わないと酸素も使う気になりませんね。
−−って言うのは?
大 酸素上げる余裕なんて全然なかったですよ
−−なるほど
平 自分のもので精一杯!
大 荷上げする時ダウンのジャケットも置いてちゃって、夜が寒い寒い!
−−なるほどね。
(写真を見て)うお!?
何だよそんな事言って、お前らシェルパ使ってるじゃん!
大 いや、これ(写真左)平出です……。あの事件(NYのテロ)があったから、帰る時、平出と一緒で大変でしたよ
−−そりゃ疑われるよ
−−ところで二人は英語はできるの?
平 僕はできません。
大 いんちき英語で頑張りました。
−−アジアン・イングリッシュか!?
平 チベット人とばっかりしゃべってましたよ。
−−お前は現地人だからな。
−−今回の遠征の日程は?
平 夏合宿を8/9までやって、12日に出発でしたから、OBの許可とるために後輩の面倒をしっかり見るのが条件だったので、ぎりぎりまで頑張りました。
大 8月12日出発で、同26日までランタン谷で高所トレーニング。9月6日にBCに入って登頂が同24日。25日ベースに帰幕。10月7日に帰国です。
−−って事は、登山期間は……。
大 約二十日です。
−−思ったより短いんだね。
大 僕達はC3を設営してそのままアタックしたんで早くいけましたね。
実際C3まで行くと、BCがすっごく下の方に見えて、降りる気がしません。
平 荷上げとかも自分でやっていて、C3設営してまた降りるとかしていたら、体力的にもそれだけで一杯一杯になってアタック時に余力が残らなかったかもしれません。
大 空荷だったらまだいいですけど、荷物を背負うと登ったり降りたりが本当にきつくて、C3に着いた時には下降りる気なかったですね。
あそこまで降りたら、もう上がって来れない!みたいな。
−−八千の空気はどうだった?
大 頂上ではあまり薄さは感じませんでしたよ。荷上げの時が一番きつかった。
平 7千mラインが一番辛かった。
大 俺はC3の荷上げが一番辛かった。
−−二人とも順応は上手くいったの?
大 BCまでシェアしていたヨーロッパの人達の中にはBCで敗退した人もいましたが、僕達はそんなの全然無かったですね。
平 BCが5700で高いんですよ。だから、そこでやられちゃう人が結構多いみたいですね。
−−そりゃ高いな
大 多分、一番高いBCのひとつじゃないですか。それに僕達、C3で寝れないって聞いてたんですけど、寝ないと回復しないと思って寝ました。寝れたのが良かったですね
平 そうですね。他のパーティーのシェルパもC3はお茶飲んでアタックを待つだけで、寝れないって言っていたんですけど、まさか眠れるとは思っていませんでした。
大 でも僕達ガモウパックつかったんですよ。
−−え?
大 ネパールで高所順化している時、日本人の63歳位のトレッカーが意識不明になっちゃって……。他の団体が持ってたガモウパック借りてきて使ったんですよ。もう、その人パルスオキシメーターで20台でてるし……。
−−その人復活した?
大 いやあ、最後まで分からなかったんですよ……。
−−……。で、どうしたの?
大 シェルパの人に頼んで、4300から3900まで一緒に下ろしたんですよ。もう、夜中土砂降りの中、ランタン持って……落っこちそうな谷の中、地獄みたいな風景でしたよ。
平 天気がよければ、ヘリが来るはずだったんですけどね。
大 次の日に3300まで降りたんですけど、意識戻らなくて……。僕達も疲れてしまったし、自分達の事もあったんで後はシェルパに任せてしまったんですが、あの人は一体どうなったのでしょうか?
−−ド、ドラマだね……。
平 最初からそんなもの目の当たりにして、本当緊張しましたよ。俺もこうなるんじゃないかって……。
大 そうですね。すごく慎重になりましたよ。意識して順応するようにしました。
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