越後/清津峡廊下


●2000年8月5日〜6日
●木下徳彦(東京岳人倶楽部)、敷島悦郎(風来坊)、森圭司(風来坊)、山田大介(名古屋ACC)


実は2年以上も前から遡行の対象として狙っていたものであった。水流から70mも上にかかる鹿飛(むささび)橋から見た水流は荒々しく、こんなのどうやって突破するんだ?と考えてしまうと同時にこの廊下を遡行してみたいとムクムクとアブナイ気持ちが湧き上がってきた。しかし、その年(98年)の冬の岳人で“世界で一番フリーがうまい沢ヤ”の成瀬陽一氏が遡行したことを知る。かなりショックだった。一体何の本を見てそんなの見つけたんだ?まぁいい、こんなの自己満足の世界だから・・・と考えると少しは気分が楽になった。

おそらく沢登りとしてはなじみのない場所であるので、多少の解説をしておくと、今回の遡行対象部分は、上越/越後湯沢近辺/清津峡温泉〜足尾沢出合〜鹿飛橋〜八木沢に至る全長十数キロの廊下帯。途中には、300mの自然湖、流れの早い瀞(足ヒレつけないと突破できないぐらい流れが速い)、気が狂っちゃうくらいたくさん出てくる徒渉があるのです。

参考資料:岳人1998年12月号

 

8/5(晴のち曇、午後雷雨)

清津川温泉9:00〜足尾沢出合14:00

 前夜、新潟県苗場にある慶大WV部三国山荘に集まり、翌日、清津峡温泉に入る。

 9:00遡行開始。水は透き通っているが、なんだかドブ臭い。なぜ??(この理由はあとでよく分かる)各人の遡行スタイルは、ウェットスーツ上下にハーネス・水中メガネといったところ。足ヒレやライフジャケットとかもある。念のため、カムも持ってきた。

 出だしから泳ぎが混じる。上には、清津峡の遊歩道の展望台などがあり、観光客の視線を浴びながらの泳ぎ。こんな暑い日なので、水がとにかく気持ちいい(なんかくさいけど)。ウェットスーツを着ているので、水に入らないとサウナスーツだ。途中までは黒部上ノ廊下みたいな渓層が続く。

 2時間も歩くころから渓相が変わりだす。巨岩ゴロゴロで、水の流れも速くなる。なんだかすごいのが出そうだ。限りなく水線突破ということで、激流のシャワークライミングを何度も。徒渉でも、お助け紐を使う。

 堰みたいなところを高巻きで越えると、いきなり300mの大自然湖が現われた。おおー。こりゃすげーぜ。なんせ、向こう岸が見えない。

 ここは、山田さんが足ヒレをつけて突破。ロープの代わりに、水にも浮く荷造り用ビニール紐200mを使う。このビニール紐作戦はかなり成功であった。水の中を見ると、ヘドロがたまっており、メタンガスがボコボコ吹き出ているのが分かる。当然、水もドブ臭いよな〜。

 湖の奥には、快適な河原が広がっているが、我々は先を目指す。急に天気が悪くなり、雨がぽつぽつ降りだした。いかん、急がねば。すぐに泳ぎが混じる。足尾沢出前の瀞は、敷島氏が足ヒレで右岸沿いを突破する(40m)。

 右岸沿いを進み、1ヶ所左岸に徒渉すると、足尾沢出合についた。もっと進むという話もあったが、雨もかなり激しくなり、足尾沢橋から、1段上がった山道でタープを張る。ちなみに、エスケープルートは、ここまではどこにもない。

 1時間後に川を見たら、濁流になっていた。このまま進んでいたらかなり危なかっただろう。

 

8/6(午前/曇のち晴、午後/雷雨)

足尾沢出合7:00〜ムササビ橋下廊下帯(撤退)14:00〜八木沢17:00

 寝坊して、出発が遅くなる。朝から流れのきつい場所での徒渉やら泳ぎが混じる。ちょっと気を許すと、スタートまで戻ってしまいそうだ。どうもあまり減水していないようだ。上流部だけで30km近くあることを考えれば当然であろう。対岸に渡ると言っても、上流で飛び込んで、10m流されつつも対岸まで必死こいて泳ぎきるという感じである。

 出合から30分くらい遡行した1m滝は、大釜とサラシ場になっており、釜のへつりと高巻きでなんとか越える。その上で徒渉が混じる。

 さらに遡行すると、最狭部幅3mの流れのやたら早い瀞が現われた。先が見えない。まず山田が足ヒレでトライするも必死の抵抗虚しく流されて帰ってきた。奥には、白い泡をみせる流れがあり、相当にきついらしい。

 次に木下がトライ。ライジャケに足ヒレ・ビニール紐でトライ。困ったことにスカイフックをかけるところもない。2度、突破するが足ヒレがついている状態で、水からはい上がれずに流されるが、3度目に滝落口手前のテラスに必死の思いではい上がる(40m)。水が冷たく非常にきつかった。

 テラスにはい上がったはいいが、行きたいのは川の反対側。足下の川は白い泡を出しながら、ゴウゴウ流れている。どう考えてもやばいっす。相談したいが1人ではどうしようもないので、とりあえず1度テラスに集まってもらう。

 みんなに見てもらったが、目が点になっている。

 そこで、男を上げたのは敷島氏。「じゃー、俺行くよ。」なんて、心強い言葉だったか・・・。

 激流の中のサラシ場にダイブし、流れに身を任せつつ、対岸に近づき、はい上がった。見ていてはらはらする場面でもあった(W5)。

 この瀞の上流で徒渉しようとしたが流れが速すぎて出来ず、左岸を高巻き→懸垂が2回入る。

 その先には、右岸にすばらしい河原が広がっていた。ホントは昨日のうちにここまで来たかったんだが仕方がない。

 しばらく行くと再び泳ぎが入る。奥に渦を巻いている釜&瀞は、まず左からジワジワ近づき、流されつつも対岸へ激泳。バンドへはい上がって、左岸の絶妙なへつりから、釜の流れに持っていかれないように、うまく飛び込んで切り抜けた。

 しかし、次が問題。すぐ上もえらく流れの速い瀞であった。必死の徒渉も虚しく、泳ぎで流される。何度かトライするも結局ダメで、手前左岸から入る小ルンゼから巻く。なかなか台地上に上がれず、登っていったらなんと遊歩道に出てしまった。仕方なく高石沢まで歩き、再び下降。

 流れのきつい川を2回ほど徒渉し、左岸を巻いて、今回の核心部へ。「おとーさん、おかーさん、親不孝者をお許しください」と念じながら、木下が、水面の5m上からダイブし、対岸へ飛び移り、右岸を必死のへつりで1P。ここのへつりはひじょうに厳しいものがあった。油断したら、一発でもっていかれそうだ。

 次のピッチ。どうみてもやばそうだ。ここで、「秘密兵器」敷島氏を投入。超きわどい右岸のへつりをこなし、核心へ入るが、一目見た答えは×。手をクロスさせている。後で聞いたが「6級のゴルジュだよ。突っ込んだ奴がいるのはシャクなのだが、常識的に考えて不可能」とのこと。とりあえずトライするが、3mもいかないうちに白く泡立つ瀞をあっさり流される。

 空は、雷ゴロゴロで雨も降ってきた。こんなところに長居をしてもいいことないので、あっさり退却。帰りは流れに身を任せるので非常に早いが、流芯につかまり思っていた以上に流されてしまった(150mくらい?)。

そこから左岸をヤブこぎすると、15分程で登山道に出た。この時点で雨がひどくなる。間に合ってよかった・・・。

 土砂降りの中を登山道経由で戻るが、鹿飛橋から見たゴルジュ帯はシャレにもならん流れだった。

 無事に下山できたが、すぐ近くの谷川岳で鉄砲水があったとは・・・。かなりベストな選択をしたようだ。

 初めてのメンバーで突っ込んだが正直こんなに厳しいとは思わなかった。最後のゴルジュは我々の力量を完全に越えていた。滝場は少ないが、泳がされる距離や水勢を考えれば5級は堅いのではないかと思う。清津峡廊下の突破は完全に水量次第であり、一番いいコンディションを我慢強く待つことが必要なのだろう。


(記:榎並)

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