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蛭田弥希(早稲田大学山岳部OB)
長野でしがないサラリーマン(ブルーカラー)を始めてはや一年が経とうとしています。仕事は日を経るごとに忙しさを増していきますが、不真面目な私はきっちり力の抜き方も身につけ始めている・・なんてことは口が裂けても言えません。
さて、仕事には真面目な私でも、休みの日ぐらい好きなことをしようと手にする、いや足にするのはやはり山スキーです。全然山に入っていないくせに、年末にはボーナスで新しい板とビンディング、ブーツ一式を買い込んでしまい、気合いだけは一丁前。山が近いんだからいつでも行ける、と思い続けていながら、なかなか気持ちを山へ向ける余裕がなく、かといってトレーニングもほっとんどしておらず、体型が変わりつつある自分がヤバい。と考えていると、後輩のヤンマダ君から「また栂池いくっす」と冬合宿の計画を知らされ、スキーなら・・買っちゃったしな・・と心が動き、連発する泊まり出張と忘年会の間隙を縫って初めて足が山へ向いたのです。飲み過ぎ、寝不足の体にムチ打って、たどり着いた栂池高原はバッチリ吹雪いていました。ロープウエーを降り、早大ヒュッテへと続く林道に足を踏み入れると、容赦もないももラッセル。そういや昨日、大雪取材で白馬村に撮りに来たっけな・・ヒュッテに着く手前では早くも足がつり気味になり、背中に冷たいものが走ります。当初は現役がいるであろう天狗原まで行く気満々だったのが、頼むから学生よヒュッテで休んでてくれとなっていきました。しかし、ヒュッテに着くと小屋はもぬけの殻。コーヒーを一杯飲んで落ち着くと、一瞬このまま来なかったことにして帰ろうかとも考えましたが、意を決して再び外に飛び出すと、吹雪は私の帰りを促すように一層強さを増していました。風にも雪にも負けずに歩き出すもラッセルは遅々として進まず、早速足がつりだしたと思ったら、ついにはシールがはがれて雪まみれに。学生時代に愛用していた取り付け式シールと違って、雪まみれになったシールはもう粘着力を失い、私にこれで完璧、もとい、もう無理だねと語りかけてきたので、仕方なく成城小屋のはるか手前で敗退となりました。いやはや、久しぶりに訪れた山は、身も心もなまりきった私にはもう愛想を尽かせてしまったようでした。
そして3週間後、一握の悔しさを胸に宿していた私は、再び上司には内緒で白馬を目指していました。天気は晴れ。出発も前回の一時間も前。スキーにもきちんとワックスを塗り、気持ちトレーニングの回数も増やしました。栂池のロープウエーを降り、シールをつけて歩き出すと、森の中にはしめしめ昨日のものと思われるトレースが。恨みを込めるように休みもなく歩き続けていると、二時間後にはもう乗鞍岳の頂上にいました。雪質も最高で、道具も最高の私は、久々の快感バフバフパウダーに大音声で奇声をあげながら滑っていました。しかし、実は天狗原の入り口に雪洞があって、六つの目が不審そうに私を見ていて、思わず赤面。そうして下のスキー場に着くと、駐車場の管理人がちょうど不在だったので不本意ながら無賃で突破し、急いで長野に戻ると、微妙にパンダ焼けした顔で職場の会議に出席しました。
やっぱり山はいいですね。私も毎週とはいかないですが、このようなゲリラ的登山は続けていくつもりです。どんなに仕事が忙しくても、山を忘れることなく「挫折禁止」で行きたいと思います。
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