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僕はビックウォールクライミングと雪や氷のミックスしたアルパインクライミングの両方を追求していまして、アルパインクライミングの場合は日本で練習して下積みを積めばある程度はヒマラヤでも通用すると思いますが、ビッグウォールはやはり外国で数をこなさなしてヒマラヤに行かないと難しいですね。日本にはこうしたきれいな岩壁がないですし、私は10代から20代にかけてアメリカのヨセミテ国立公園にあるエルキャピタンという岩壁でトレーニングを積みました。ここは天候もよく岩登りをするには最適な場所です。
クラックを登るジャミングというテクニックがないとビッグウォールは登れません。ジャミングは自転車と一緒で一度覚えれば誰でもできるようになると思います。クラックでも体半分位入るサイズのクラックはとても怖いです。プロテクションも取れないですし、落ちると多分ずりズリになりますね。
あとビッグウォールで必要になる技術は人工登攀ですね。的確にプロテクションをセットする技術がないと何十mも落ちてしまいます。ビッグウォールでは大量のギアを使うのでしっかり整理する事ができる人でないと危険です。私は普段は家の中とか片付けるのは苦手なんですけど、壁の中ではすばやく整理することができます。あとは生活技術ですね。テントを張ったりできるアルパインクライミングよりも確かな技術が必要です。壁の中に垂直とかオーバーハングした壁の中でポーターレッジを組み立てたりとか神経を使います。あまり快適ではないです。ハーネスを外してトイレしなくてはならないこともありますし、そういう時でも常に体のどこかを繋ぎとめておかなければなりません。寝る準備も集中してないと結構危ないです。
エルキャピタンとかヨーロッパアルプスは結局は安全なんですね。すぐに救助隊が来てくれたり、それでは冒険的は部分が足りないなということで88年にカナダのバフィン島のトールというところの西壁に行きました。標高差1,400mくらいの岩壁です。落石が非常に多く、登攀中僕の後ろをトラックくらいの落石が常に通過していました。やはりエルキャピタンとかそういうところに挑む時より大変緊張しました。ケガをしたらどうしようとか、何日で抜けられるのかもわかりませんでしたので。
翌年には南米の南端のパタゴニアのフィッツロイに向かいました。嵐の大地で有名な所ですがここも90年頃には比較的ポピュラーになってきまして、私はそれでは面白くないということで敢えて7月向こうの厳冬期に挑みました。1,000mくらいの岩壁です。
結局この山は2年越しで90年に登りきる事ができました。とても風が強い所で風速30mくらいの風が常に吹いてまして、気温もマイナス30℃以下になります。ここでの体験によってその後ちょっとやそっとの悪天候ではへこたれない精神力がついたのかも知れません。頂上からの懸垂下降などの時も手を離しても落ちない上昇気流の時がよくありました。ロープを回収する時も強風で絡まってしまいらちがあかないので、わざと小さなピナクルを選んでポンとはずしたり、半分位はスカイフックを岩にかけてポンとやったりしました。ロープが絡まったりしたら1人ではどうしようもありませんし、ロープを落としてしまったら一生降りられませんからね。
これはパキスタンのフンザにあるレディースフィンガーという岩壁です。頂上自体は登られているんですがこの岩壁は何人かのクライマーの挑戦を退けています。この時はもう生活技術もマスターしてましたし、特に問題はなかったですね。こうしたビッグウォールでは雪がないので最初から水を持っていきます。この時は80Lくらいですかね、全部で180kgくらいの荷物がありました。これだけの荷物を荷揚げするにはかなり大変です。
ビッグウォールクライミングというのはじっくり行けば結構成功率は高いです。天候が悪くなったらじっとしてればいいですし、トレーニングすれば誰でもある程度の線まで行くんではないでしょうか。ビッグウォールクライミングには未知の部分を求めないと面白味がないと思います。フンザのほうに未踏の大岩壁がごろごろしてるという話を聞きまして今度はそっちのほうに行ってやろうかなと思ってます。
26歳の時、私が最初にヒマラヤ遠征に行ったブロードピークという山です。ヒマラヤの難しい所を1人で登ってやろうと思っていたんですが高所に対する知識がまったくなく、この頃は手続きも面倒くさかったので大きいチームに参加させてもらいました。僕はすぐにポーターたちと仲良くなるんですね、もちろん言葉は分からないんですけど。パキスタンに行けばカレーを1年中食べててもそんなに苦ではありません、ネパールに行ったらダルバートという豆のスープを1年中食べてても苦にはなりません。ヒマラヤを楽しむ上でこういったところから順化していかないとヒマラヤ登山ももしかしたら成功しないかもしれないし楽しめないんじゃないかなと思ってます。僕はたくさんエクスペディション行ってますけど、トレッキングもものすごい量を行ってます。
登山方法としてはとてもクラシックな極地法という方法でした。確かに飽きる方法ではありますが、高所の経験や知識がない人には高山病がどういったものかとか、どういうふうに回避すればいいのかといったことは同じ所を何度も登ってる事によって得られると思います。ロープとかを回収すれば極地法もいい方法だとは思います。
ブロードピークで得た成果といえばK2を見れたことです。ブロードピークを登りながらもK2のことが気になって仕方がなかったです。いつかは登ってやろうと思ってました。トレーニングしていたからなのか、今話題の遺伝によるものなのかはちょっとわかりませんが、高所の経験がない僕が7人いたメンバーの中では一番強かったです。初めての遠征で8,000mを酸素ボンベを使用しないで登れたのはラッキーでした。皆さん初めての高所登山はつらいって言いますけど僕もこの登山はつらかったですね。これ以降は僕は頭痛とか吐き気とかをほとんど経験した事がありません。
翌年の92年の冬には1人でヒマラヤのアマダブラムという山の西壁に挑みました。キャラバンの時から体調が悪くトレッカーにみんな抜かされて、受け付ける食べ物は水とチョコレートくらいでしたが、モチベーションは落ちなくて結局取り付きました。
標高差1,500m位なので装備も軽くピッケル・バイルにアイゼン・ヘルメット、ザックの中はツエルトとコンロ1つにコッフェル1つ、ロープは6mmか7mmを20m、それで全部です。結局アマダブラムには3日間かけて登りきる事ができました、僕にとって最初にヒマラヤでソロクライミングに成功した山です。
しかしやっぱり疲れていたんでしょうね、指が凍傷になってしまいました。この時一般ルートに合流したあと韓国隊と一緒になったのですが、抜かされて頭に来てがむしゃらに素手になってフィックスロープを腕に巻いて登っていたらいつのまにか全部凍傷になってしまいました。しかし全員を抜かしました。(笑)凍傷っていうのは昔ですと登山家の勲章みたいに言われましたが、2度と生えてきませんし皆さんも気をつけたほうがいいです。
えーこれはヒマラヤでも優しい山ガッシャブルム峰です。春の穂高みたいですが、しかしそこはやはり8,000m峰ですから吹雪きになったりだとか、酸素吸って登ってる人は酸素が切れたりしたら大変なことになるでしょうし、その辺は優しい山とはいえ心して登らなきゃいけないんではないかなと思います。優しかったですけどやっぱり頂上に立つのは気持ちいいですね。8,000m峰に登ると次もまた多くの人は8,000m峰に登りたくなるんですね。ただそれは良くないんじゃないかと思います。標高は低くても美しくて魅力的な山はたくさんあるので、そういった山を選んで冒険的なものを追求していくべきだと思ってます。
1994年、6年前ですね。私は一つの夢を実現させるためにこのチョオユー南西壁に行きました。高い山でなおかつ難しい所をひとりで登るためです。頂上はは8,201m、南西壁の標高差は2,200mあります。ここには優しい一般ルートがあり疲れていてもここなら下れるだろうということでこの山を選びました。僕がどうやって高度順化しかたを判断するのは尿の色を見たり、脈拍を診たり、ジョギングしてどれだけ息切れがするかとかをみて、パルスオキシメーターというのは嫌いで使いません。
9月20日、挑戦した日に鶴が山頂を越えてました。単独登攀で難しいのはどこまで突っ込んでいいのかということですね。誰でも多少は高所の影響を受けますし、それがあったからといって行かなかったのでは一生登れませんし、だからといって強い高山病になったら帰ってこれませんしその辺の判断が非常に難しいです。危険な部分を怖いと思わなくなると危ないんですね、だからずっと危ないんだ危ないんだと意識しながら登ってました。
取り付いてから50時間後、私は頂上に立ちました。私の夢が実現した瞬間でもありました。ただこの年まだ誰もノーマルルートからも頂上に立っていなかったんで、どっちに降りたらいいかがわからずに苦労しました。日本でもやらないような地図とコンパスを見ながらの下降を8,000mの頂きでやるとは思いませんでした。
98年にはクスムカングル東壁というところに行きました。私はこの登攀でロープをつけずに登ろうと決意しました。5級の連続する岩壁で登山靴で登るのは大変苦しかったです。チョオユーのほうがいろんな人の評価は高いんですが、僕としては理想的なクライミングだったなと思ってます。ベースを発って22時間後、真夜中に頂上に立ちました。クスムカングルは所詮は6,000m峰なんですね、本当にやりたいことは8,000m前後で岩がたくさんあるところをロープを付けずに軽やかに登れたらなということが私の夢でもあります。」
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